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今どきでなく古の同人サイトなうちも2019年を迎えることができました。
きっとスマホの方が多いかなーとスマホ対応して今どきサイトへの変貌を遂げたいと思ったのですが、WordPressだと移転しなきゃいけないし自力で勉強する頭がないのでこのまま古のサイト仕様でしばらくいこうと思います。
続きから、大菊の雪の日のお話です。
テニラビのSNOWイベかわいいな…と書き始めたら年を越してしまいました。
iPhoneのメモ帳で書くことが多いので、更新するためにはブログかPixivに上げてから、パソコンでコピペするのが一番楽なので、また後ほどサイトの方にも上げますね!
そして、実は貝ボタンのお話の続きも2年前のiPhoneのメモ帳から発見したので、また見直してから、ブログに近いうちに載せようと思います。お待たせして申し訳ないです。
こんなサイトに足をお運びいただいてありがとうございます!そして、拍手もありがとうございます!やる気いただきました!
読んでいただけるだけで本当にありがたいですー!!
(最近の人はweb拍手とか知ってますかね?)
それでは、続きから雪のお話です↓
目覚まし時計の音で、眠りからすくい上げられるように覚醒する。アラームを止めて時刻を見ると、針が指すのはいつもの起床時間より三十分早い時刻だった。
……そうか、今日は。
急いで布団から抜け出すと、空気がひんやりとしていて、思わず「寒い」と呟いてしまう。まだ薄暗い窓の向こうを確認しようとカーテンを引くと、また一段と冷たい空気が頬へと伝わる。そして、目に飛び込んできたのは、
「雪だ」
一晩で真っ白に塗り替えられた風景だった。
雪の朝
いつもより早く起きたのは、雪が積もる可能性があるという天気予報を聞いたからだった。
部室の鍵を開けるという日課がある俺は、雪のために登校時間が長くなるかもしれないと、いつもより早く家を出ることにした。
吐く息が空気を白く染める。サクサクと音が鳴る雪を、いつもよりゆっくり踏みしめて学校へと向かう。
もうそろそろ、あいつも起きた頃だろうか。ふと気がつけば、いつでも彼のことを考えてしまう。なかなか寝起きの悪い彼は、寒い今日はますます布団から出たがらないだろう。
そんな姿を思い浮かべるだけで、俺の心はぽっと灯りがついたようにあたたかい気持ちになる。
まだ踏み固められてない新しい雪は意外と歩きやすく、俺は思っていたより随分早く学校に着いてしまった。
一度職員室に寄って鍵を受け取ってから部室へと向かう。みんなが来る時間までは部室で雑用でもしておくことにしよう。
さて、何をしようか。今日の朝練はコートの雪を掃いて午後の練習に備えるため、いつもの朝練の準備はいらない。備品が散らかっていたから整頓をして、古くなったボールを選り分けて、学校のラケットもグリップを巻き直した方がいいか……と考えていると、聞き覚えのある声が俺の耳に届いた。
「大石、おっはよーん!」
滑らないように地面を見ていたから、部室の側に立っている人物に気が付かなかった。そこに立って手を振っていたのは、登校中にも思い出した彼。
「英二!」
急いで彼の元に駆け寄る。
いつも遅刻ギリギリの英二がこんなに早い時間にいることが信じられず、
「……本物?」
と、つい口が滑ると、
「どーゆー意味、それ?」
口をとがらせて訝しげに英二が聞き返してくる。
「いや、こんなに英二が早く来るなんて珍しいから」
だから雪が降ったのか……なんて考えていると英二は、
「なーんか失礼なこと考えてない?」
と、またも訝しげに俺を見てきた。妙に勘が良いやつだ、と苦笑いをする。
「それより、どうしたんだ。いつもなら、まだ俺もいない時間だぞ」
この寒い中、英二はマフラーも手袋もしておらず、すぐに自分のマフラーを外して英二の首に巻く。
手袋を外して、手のひらで英二の頬を包み込むと、凍えた朝の空気に冷やされた頬がぴたりと手のひらに吸いついた。
「今日、雪が降るかもって思ったらわくわくしちゃって。早く起きちゃったんだ」
「そうだったのか」
きっと、雪がうれしくて急いで家を出てきてマフラーも手袋も忘れてしまったんだろう。
同じように雪が理由で早起きをしたけれど、仕事のための俺と英二とじゃ正反対だ。英二のそういう素直な気持ちを持てるところは、俺がふと忘れてしまいそうになる部分で、尊敬していた。そして、英二と一緒にいるおかげで、俺もそういう気持ちを思い出すことができることに感謝をしていた。
「大石の手、あったかい」
気持ち良さそうに目を閉じて言う英二に、ドキッとする。
「……英二のほっぺは冷たいね」
そう言うと英二はにっこり笑う。
「大石が『ほっぺ』って言うの、かわいいな」
「そ、そうかな」
英二に予想外のことを言われ戸惑うが、英二は頷く。
「うん。そうだよ」
「……英二の方が、よっぽどかわいいと思うけど」
手を後ろへ滑らせて英二の耳たぶをつまむと、そこもかなり冷たい。耳を塞ぐように手で包み、暖めようとする。
「こんなに冷えて。……寒かっただろ」
「……大石って、それは素でやってるの?」
「え、何が?」
「世話焼きっていうか、面倒見がいいっていうか。最近、青学の母とかあだ名がついてるし」
少しむすっとした表情で、言い出しづらそうに英二の目が泳ぐ。そして、少し躊躇ったあとに英二は口を開いた。
「……なんか、俺以外にしたらやだなって。こういうの」
それは、もしかして。少し期待を込めながら、
「もしかして、ヤキモチ?」
と聞くと、照れて否定するかと思ったが、英二は珍しくしゅんとした表情をして目を伏せ、
「……悪い?」
とぼそっとつぶやいた。
「悪いわけないだろう。むしろ、うれしいよ」
耳に触れていた手を再び頬へすべらせると、英二の目がぱちりとまばたきして再び俺を見る。身長の差のせいでやや上目遣いになるその表情は、俺だけが見られる特権のような気がして――ほんの少しだけ、心が満たされたような、でも足りなくてもっと何かがほしくなるような、不思議な気持ちになった。
夏に三年生の先輩たちが引退し、副部長となった俺は、いつの頃からか『青学の母』なんてあだ名が付けられていた。確かに他の部員のことを気にして世話を焼くことが多く、そういう性分なんだろうと思う。
ただ、英二だけは特別だ。
もっと触れたい。
もっと一緒にいたい。
もっといろんな表情が見たい。
俺だけに笑いかけてほしい。
英二相手だとどんどん欲張りになる自分を発見する。こんな風になるのは、英二に対してだけだ。
そして、こういうことをしたいって思うのも――。
手で頬を包んだまま、目を閉じて顔を寄せると、英二の睫毛がゆっくりと伏せられた気配がした。
頬と同様、朝の空気に冷やされたそこは、いつもより少しかさついていた。
顔を離してお互い見つめ合う。英二の頬はいつの間にか赤くなって、同じく赤い唇からほうっと白い息が洩れた。
「……おい、青学の母。こんなこと部員にしていいのかよ」
ぶっきらぼうな言い方は照れている証拠だ。
「これは、英二の恋人として、だよ」
はっきりと恋人、という言葉を遣ったからか、一段と英二の頬が赤くなる。
「英二のほっぺ、暖かくなったね」
「……おかげさまでね」
ふいっと顔を背け、俺の手をはねのける。そして、
「俺だけになら、許してやるよ」
と、またぶっきらぼうに、赤いほっぺのままで許可してくれた。
「今日、朝練どーなんの?」
照れを誤魔化そうとしたのだろう。英二が話題を変えた。からかってやろうかとも思ったが、本気で怒られかねないと止めておく。
「晴れて午後には溶けるだろうから、朝はコートの雪をどかして、後は自主練かな。一緒にどこかで筋トレしようか」
英二は俺の提案に素直にこくんと頷き、コートの雪に目をやった。
「そっかー。もったいないな、せっかく積もったのに」
残念そうにつぶやくが、すぐに何か思いついたようにころっと笑顔に変わって、
「じゃあさ、今のうちにコートの上歩いてもいい? 俺、新しい雪踏むの、好きなんだ」
と言った。
「ああ、みんなが来て集合がかかるまでならいいぞ」
「やったー! いってきまーす」
「待て英二、俺の手袋貸すから」
一目散に駆け出しそうな英二を止めて、自分の手袋を英二の手にはめる。
「ほら、やっぱり世話焼きなんだから」
と言う英二は、雪のおかげか先程とは打って変わって笑顔のままで、俺に手を預けていた。
「だから英二にだけだって。……はい、できた。いってらっしゃい」
コートへ向かう英二を見送って、さあ雑務をしようと部室に入ろうとすると、
「おおいしー!」
と英二が呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと、少し遠くで英二が手を振っていた。
「本当は、早く起きちゃったんじゃなくて、早起き頑張ったんだー!」
英二が大声で告げる。
「大石と、一緒に雪を見たいって、思ったんだー!」
にっと笑ってピースサインをして、また英二は背中を向けてコートへ走る。
――英二と一緒にいるおかげで、俺もそういう気持ちを思い出すことができる。
そうか。
いつでもできる雑務なんかより、今英二と一緒にコートへ向かう方が、よっぽど楽しいじゃないか。
スポーツバッグを置いて、腕時計で時間を確認する。まだ他の部員が来るまでは少しだけ時間がある。
「英二!」
声を掛けると、やっぱり来た、と言うかように英二が笑って、立ち止まる。
俺の手袋を片方外してポケットに入れ、英二は手を差し伸べた。
そうだ。手袋を貸したために冷たくなり始めた指先は、次は英二に暖めてもらおう。
二人隣り合った足跡は、今日の朝だけの、二人だけの秘密だな。
なんて、少し恥ずかしいことを考えながら、自分の指先を英二のそれに絡めた。
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