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貝ボタンのお話5
先日ブログで言ったように、貝ボタンのお話の続きをまずはこちらに上げます!

実は新年早々インフルになりまして、大変な年明けになりました。
毎年職場で濃厚接触してても全くかからないのにな〜。かかるときはかかりますね。
数日微熱が続き、助けを求めて実家に帰省中に高熱がぽーんと出たので、ありがたいことに実家にそのまま数日お世話になりました。
今は熱が下がったけどまだ本調子でないので、たまに息子の様子を見に行きつつ寝させてもらってます。親っていくつになってもありがたいですね…
今日家の方に戻る予定です。

追加から連載の続きです。2年もお待たせしてすみませんでした。
なぜかiPhoneのメモ帳のコピペすると文字が大菊なる…あ、間違えた。大きくなるので読みづらいかと思いますが、また近いうちにサイトの方に載せるので、文字が大きすぎて読めな〜〜〜い!!!って方はそちらを少し待っていてくださいね!


 英二との勉強会は、二、三週間に一度の割合で行われた。

 英二が日曜日なら空いてると言っていたので、俺はできるだけ日曜日は予定を入れないようにした。

 お互い恋人の有無は尋ねていなかったが、貴重な休日の半分ほどをお互いと過ごしていたため、暗黙の了解のようにいないことと察していた。

 ……そして、そのことに僅かな期待を持ちそうになるが、かつて英二を傷つけた自分にはそんな願いを持つ資格はないという自戒の念を抱き、苦々しい気持ちになる。

 しかし、英二との勉強会が二ヶ月程続いた八月のある日、勉強会は突然の終わりを告げることとなった。

「一次試験、落ちちゃった」

 開口一番に、英二が軽い口調で言ったため、俺は採用試験のことを示してるのだとすぐには気がつかなかった。

「だから今日で勉強会も終わりだなー。今までありがとうな、大石」

 俺の肩をバンバンと強くたたいて、英二が言う。

……残念だったな、それは」

 こういうときに、気の利いたことを言えない自分が情けない。

「英二、すごく頑張ってたのに」

「いーや、頑張ってるやつはもっと頑張ってるもん。俺、勉強元々苦手だし。……残念無念、また来年、なんちゃって」

 俺に気を遣わせないように、わざとおどけたように話しているのが伝わってくる。そして、きっと自分自身の気持ちも誤魔化しているのだろう。落ち込んだ気持ちに、気付かないように。

「来年、英二なら受かるよ、絶対」

「うん。ありがとう」

「だから……俺の前ではそんな無理するなよ、英二」

 その言葉に英二ははっとしたように目を見開き、そしてイタズラがバレた子どもみたいにバツの悪そうな顔をして、

……うん。ありがとう」

 と、同じ台詞をゆっくり繰り返した。

「俺に隠そうなんて、十年早い」

 と俺が冗談を言うと、

「十年経っても隠せないんだなぁ」

 と英二がしみじみと返す。

「まだ十年は経ってないだろ」

 あの夏。俺たちが十五歳と十四歳だった夏。

 十年経つまでにはあと三年ある。

「相変わらず頭固いな、大石。大体でいいんだよ。四捨五入!」

 そう言って笑った英二の顔は、先程よりも幾分明るくなったように感じた。

 英二は今日は俺の勉強に付き合ってくれる予定だったらしいが、今は大学が夏季休業中のため、俺も差し迫って勉強しなければいけない訳ではなかった。

 それならばと、今日は勉強会の予定を中止して、二人でどこかに行くことになった。そう決まったときの英二の嬉しそうな顔といったら、相当なものだった。

「で、どこ行く?」

「英二は行きたいところある?」

……んー、特にない」

 以前入った喫茶店で、今日の予定について計画することになった。

「大石は?」

「俺も、特には……

「どこで遊ぼうかなぁー」

 オレンジジュースのストローに口を付けながら、英二が悩む。

 どんな場所に遊びに行こうかと考えると、かつて英二と過ごした日々が自然と思い返される。

 あの夕日の見えるコンテナ、帰り道にあるファーストフード、CDショップ、水族館、ゲームセンター、俺の部屋、英二の部屋。

 ――今の英二は、どんな場所が好きなんだろうか。

 そういえば、と英二が口にしている飲み物が、かつての記憶と同じものであったことを思い出す。

「今日はオレンジなんだな」

「んー?」

 英二が急に話題を振られ、ストローを咥えたまま首を傾げる。

「この前はアイスティだったから」

「あぁ、今日はこういう気分なんだよ。あとさ、あの時は、ちょっと……

 と、少し言いづらそうにした後、

「大石に久しぶりに会ったから、ちょびっと大人ぶって格好つけちゃった」

 と照れたように笑った。

 ――なんだ、英二はちっとも変わってなんかいなかったんだ。

 そのことに、大きな安堵を覚える。

 グラスのオレンジ色と英二がよく似合っていた。昔と同じ組み合わせのその色合いが懐かしかった。

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